証券 K.2nd:繋がる排水溝のようです

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繋がる排水溝のようです   2008.07.24

閲覧注意(グロ的な意味で)
('A`)「ただいまぁーっと」


じっとりと湿気が体にまとわりつく、蒸し暑い夜だった。

誰もいない部屋に控えめに呼びかけて、玄関先に荷物を放り出す。
そのまま放置されているゴミ袋を掻き分けて部屋の中に入り、
携帯を充電させると俺は窓際の洗濯物の山から下着を引っ張りだす。

ほこりが薄ら溜まっている壁掛け時計を見ると、深夜二時を回った所だった。
すっかり夜型生活が定着してしまった。深夜にバイトを入れる俺も悪いのだが。


上の階からは、ギシギシと何かが軋む音がしている。
大方、上のDQNがまた女を連れ込んでいるんだろう。お盛んな事だ。

久しぶりに聞くその音に、というより、ヤリチンDQNに対して舌打ちを一つ打って、
明日は昼前には起きる予定なのでさっさと風呂に入って寝ようと思い、
しわくちゃの下着を抱えて風呂へ向かう。古いアパートなので、風呂はユニットバスだ。




('A`)「あー 最近掃除してねぇ」


水垢が少々こびり付いているがそんな物を気にしている場合ではない。
さっさとこの脂汗を洗い流して、ベッドに突っ伏してやろう。
そんな事を、半分眠りながら考えていたときだ。

どこかからか、うめき声がする。


('A`)「!?」


上の住人と同時に風呂に入っているときは、上からシャワーの音が聞こえたりもする。
だが壁が薄いとはいえ、よほど大きな声を出さない限り声は流石に聞こえない。
それに、ここは風呂の中だ。他の部屋よりはいくらか壁が厚いはずなのに。




だが、現にその低いうめき声は続いており、
シャワーの音に混じりながら切れ切れになって俺の耳に入ってくる。
うめき声をまともに聞くのには結構な勇気が必要だったが、
俺はシャワーを止め、換気扇を止めて、風呂の中を無音状態にする。


「うううう」

('A`)「……?」


音の出所を、耳を澄まして確かめる。

よーく聞くと、ユニットバスの中の排水溝から聞こえてくるようだった。
俺は詰まっている毛を取り除き、しゃがみ込んでそこに耳を近づける。




「うううう」

('A`)「……?」


男か、女か。声が低い上、排水溝を通って変にくぐもった音になっているのでわからない。
それとそのうめき声の後ろに、さらに何か音が混じっているのがわかった。


ギシギシギシギシ

「うっっぐうぅぅぅう」

(;'A`)「……」




本能が警鐘を鳴らす。

やばい。なんかわからないけどこれはやばい。
上に行って、すぐにでも部屋に入るべきか。警察を呼ぶべきか。
いやだけど今日はDQNがたまたま風呂でセクロスをしようと言い出したのかもしれない。
ぎしぎしいってるし、うめき声はその時の声に聞こえなくもない。

後から考えると、その時の俺はまさに『気が動転している』状態だったんだと思う。
結局、大慌てで体を流し終えると、俺は転がるように風呂を出てしまった。
風呂の電気を消す時、うめき声とは別の何かが聞こえた。気がした


「うぅぅ   あ う え え 」





それから数日は特に何もなかった。
あえて言うなら、上からギシギシ音がしなくなったくらいか。

DQNのデカ1ボックスも駐車場から無くなり、ほとんど毎日深夜まで酒盛りをやっていたのに、
最近では電気すらついていない。家には一度も帰ってきていないようだ。

俺は相変わらず深夜のバイトを続けており、
バイト先から帰ってくる度になんとなく二階のDQNの部屋を見上げるのだが、
雨風にさらされ続けた洗濯物と、ずっと止まったままの室外機があるだけで、
電気がついている事はなかった。


('A`)「……」


今日もあの時と同じような、蒸し暑い夜だった。

こういう気候の日は、あの時の事を思い出してしまう。
時間帯も同じくらい。俺はあの時と同じようにゴミ袋を押しのけて家に入り、
洗濯物の山から下着を引っ張りだし、風呂へ向かう。




風呂の電気をつけて、汗ばんだ服を便座に脱ぎ捨て、シャワーを出す。
最初は冷たいので、早く暖かくならないかとイライラしながら待っていた時だ。


「うううう」


あの時と同じうめき声。
だけど俺は聞こえないふりをして、まだ冷たいシャワーを体に浴びせる。
頭に思い切りかけて、眠たくないが、目を覚まさせる。

上には誰もいない。
今日も電気はついていなかった。物音もまったくしていない。
そう。上には誰もいない。誰もいないはずなんだ。




泡立ちの悪いシャンプーを狂ったように頭に塗り付け、髪を洗う。
出しっ放しのシャワーの音、したたる水音、俺の頭を洗う音。

そして、うめき声。


「うううう」

('A`)「……なんだよ……なんなんだよ……」


頭だけ洗って、体はもう洗わないで風呂をでようとする。
カーテンを開いたときだ。排水溝から、ごぼんと何かの音がした。


「あ う え え」


ごぼっ ごぼごぼごぼ


凄まじい勢いで、血が逆流してきた。
赤黒い血は、何やら茶色い糸のような物を混ぜながら俺の足下に迫ってくる。
悲鳴を上げて、俺はユニットバスから足を出し、タオルを巻き付けて風呂の外に逃げた。





体も拭かずに部屋に行き、足を見ると、血がぬっとりとまとわりついていた。
ほこりの溜まったフローリングの上でも、その血のせいで滑りそうになる。
俺は半狂乱になりながら、血を拭った。

血に混じって、茶色い糸が固まった物がタオルについた。
茶色い、髪質の悪そうな、枝毛だらけの髪の毛。

俺は適当な服に着替えて、鍵もかけずに外へ飛び出した。
向かう先は、近所に住む友人の家。


(;'A`)「開けてくれ! 開けてくれよ!」

(#^ω^)「誰だおこんな時間に! うるせえお!」

(;'A`)「……ブーン……よかった……助けて。助けてくれ」

(;^ω^)「どうしたおドクオ! なんでそんなにびちょびちょなんだお!」

(;'A`)「……それより先に目につく物があるだろう」

(;^ω^)「おっ!? 顔色悪いお! いつにも増して白くなってるけどどうしたんだお!?」

(;'A`)「……ちょっと部屋にあがらせてくれ。すまない。本当に……」




こんな時間にも関わらず、ブーンは俺を部屋にあげて、適当な座布団に座らせてくれた。
その後冷蔵庫から出された麦茶を俺は一気飲みし、
俺の正面に神妙な顔で座るブーンに、今さっきあった出来事を全部話した。

変なうめき声、排水溝から溢れ出た血。茶髪の髪の毛。


(;^ω^)「……本当かお?」

(;'A`)「この顔を見て、嘘だと思うか」

( ^ω^)「いや、あまりにも現実離れしてて……だってそれどうかんがえてもホラーだお」

(;'A`)「でも、本当に今さっきあった出来事なんだ」

( ^ω^)「……とりあえず今日は僕の家に泊まって行くといいお。明日警察に行こうお」


ブーンのその言葉に安心し、全身の力が抜けた気がしたが重大な事に気づいた。


('A`)「……鍵、かけてない。電気つけっぱ」




結局、俺はまたアパートに戻る事になった。次はブーンを引き連れて。
金目の物は余り無いとはいえ、一応通帳や携帯がそのまま置きっぱなしなので、
それらをまとめて家に鍵をかけて出てこないとまずいだろう。

ブーンの家から俺のアパートまでは、余り遠くない。歩いて10分くらいだ。
さっきは無我夢中で走ってたからそんなにかからなかったが、
帰りの道はひどく時間が長い気がする。あの家に戻りたくないという気持ちの現れか。


('A`)「部屋はいりたくねぇ……」

( ^ω^)「僕も一緒に行くから大丈夫だお!」


ブーンが屈託の無い笑顔で、こちらに話しかける。
昔からこいつはお化けとかを信じない質だから、俺よりも怖くないのだろう。
でもあの血まみれのユニットバスを見れば、いくらなんでも信じざるを得ないはずだ。




俺の部屋は、やっぱり俺が出てきたときのままだった。
といっても俺がいない間に電気が消えてても怖いが。

廊下の途中にある風呂への入り口は見ないようにして、ブーンを無理矢理先頭にして部屋に入る。
携帯、財布、通帳を荷物に入れてそそくさと部屋を後にしようとした時だ。

ブーンが俺の前でいきなり止まった。
肉がついた背中に鼻をぶつけて、俺も止まる。


(;'A`)「なんで急に止まるんだよ馬鹿!」


俺は必死になりながらブーンの背中を殴るが、
狭い廊下いっぱいに広がったブーンの背中はぴくりとも動かない。
隙間を通って先に行こうにも、ゴミ袋が進路を邪魔していて抜ける事はできない。


( ^ω^)「いや、さっきドクオ、血が足に付いたまま部屋に出てきたって言ったお?」

(;'A`)「あ、あぁ」



( ^ω^)「なのに僕が部屋に上がった時、フローリングに血の跡はついてなかったお」

('A`)「あ、そういえば……」

( ^ω^)「あのドクオの様子だとわざわざ床を拭く余裕なんてなかっただろうし」

('A`)「……」

( ^ω^)「風呂の中にも、もう血はないんじゃないかお?」


ブーンの背中がゆらりと動いたかと思うと、風呂の中に入って行く。
電気はつけっぱなしだ。カーテンも開いたまんま。
風呂に入ったら、真っ先にユニットバスの中の血が見えるはずだ。


(;'A`)「ブ ブーン……」

( ^ω^)「なんともないお? ほら、血なんてないお」


ブーンの背中が横に退き、俺の前にユニットバスが見えた。
中には、少しこびり付いた水垢と、俺のチン毛しかなかった。





それからブーンの家に戻った訳だが、俺は洗面所に入る事ができずにキッチンで歯磨きをさせてもらった。

ブーンの家は一軒家なので、ユニットバスではなくちゃんとした浴室がある。
なのであの謎のうめき声が聞こえる可能性は無いと思えるが、
もしあれが俺にまとわりつくタイプのお化けとか怨霊だったらと考えると、
どうしても洗面所に近づけなくなるのだ。

俺は一晩ブーンの家で過ごさせてもらい、昼になったので家に帰る事にした。
流石に、昼ならお化けも出れないだろう。
小学生みたいな考えだが、現に昼お化けにあったという話は聞いた事が無い。

すっかり習慣になってしまったので、俺は無意識のうちにあのDQNの部屋を見上げる。
やっぱり電気はついていない。カーテンは開いたままだ。
まぁ、いたとしても昼から電気をつけるような事は無いと思うが。

家に入る時、なんだか胸がむかむかする臭いがした気がするが、すぐにその臭いも消え失せた。




夜。

俺はバイトから帰ってくると、風呂にも入らずにそのまま寝ようとベッドに直行した。
昨日あんな目にあったばかりなので、すっかり風呂に対する恐怖心が植え付けられてしまったようで、
風呂の前を通るだけでも膝が震えだす始末だった。


(;'A`)「体ぎとぎとして寝付けねぇ」


ベッドに入ったはいいが、私服のままなのでなんとも寝心地が悪い。
仕方が無いので起き上がり、下着に着替えようとする。

その時、シャワーの音がした。風呂の方からだ。


(;'A`)「行かない。俺は絶対行かないぞ」


中途半端に着替えて、ベッドに頭から入って布団をかぶる。
なのに、耳元でシャワーの音が聞こえる。


「うううう」

(;'A`)「なんなんだよ……」




俺は自分の血流の音しかしなくなるまで強く耳をふさぐ。
なのに。シャワーの音に混じって、あのうめき声が聞こえてきた。
まるで布団の中に反響するように、その声はどんどんと大きくなって行く。
半比例して、俺の体は縮こまってゆく。


「ううううう」

(;'A`)「あああああ くるなくるなくるなくるな」

「あ う え え」

(;'A`)「うわあああああああ!!」


「あ う え え」





布団の中に、あの声が響く。
くぐもった声じゃない。はっきりとした、女の声。
俺は大声を出して、その声をかき消そうとする。

なのにその声は俺の耳元で、こう呟くんだ。



「た す け て」


布団の中にさっきのあの臭いが充満したかと思うと、俺は意識を失った。




俺は一日近く気絶していたようだ。ゲロまみれで。

バイト先の店長が俺の携帯に何度も連絡を入れたのに俺が出なかったため、
一人バイトを俺の家によこしたらしい。

鍵が開いているのを不振に思ったバイトがドアを開けて、
俺の吐瀉物の臭いを嗅いだ後大慌てで大家を呼んだ。

俺は頬をはたかれて気がつき、目の前にいた大家とバイトに、
狂ったように昨日の出来事と排水溝から血が出てきた事を話したところ、
大家は何か心当たりがあったようで、
一応俺の部屋の風呂を調べた後、二階のあのDQNの部屋に向かって行った。

鍵を開けると、猛烈な腐敗臭。俺が昨日嗅いだ臭いと同じ臭い。
そのまま警察を呼ぶ事となり、普段露出狂くらいしかうろつかない静かな住宅街は、
あっという間にパトカーが数台も来て警察官がせわしなく動き回る、落ち着きの無い場所になってしまった。




あのDQNの部屋から、女の死体が見つかった。
ユニットバスに体を中途半端に切られた状態で、突っ込まれていた。
口には何かを詰め込まれて、声を出せないようにされていたらしい。
そして体はエビぞり状態で排水溝に顔を向けるようにしてうつぶせで死んでいたとか。
髪は切られ、首も切られ、腹も切られ。ユニットバスは腐った血まみれ。

多分、私情のもつれかなんかで突発的に女を殴った後、気絶したのを死んだのと勘違いして、
DQNは風呂で死体をバラバラにしてどこかに持ち運ぼうとしたのだろう。
だけど途中で女が気がついて、もう引き返せないからそのまま刺殺したという訳だ。

これは俺を事情聴取した警察と近所のおばさんと大家さんに聞いた情報をまとめた結果だ。
俺が最初にうめき声を聞いたのが、だいたい二週間前。死体も死後二週間あたり。
俺が風呂に入っているときに殺されたのだろう。これを知った時、背筋が凍るような感触がした。
ちなみに、DQNは捕まっていない。




それから俺は深夜のバイトもやめ、遠い街で改めてアパートを借りて生活している。
だけど、時々聞く事があるのだ。主に深夜。
風呂に入っている時なんて、特に。


「あ う え え」


あのくぐもったような、助けを呼ぶ声を。



終わり

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