証券 K.2nd:流石な父者のようです

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流石な父者のようです   2008.07.11

夕方。各家庭から食卓の音が鳴り、匂いが溢れ出す時間帯。
そんな匂いが腹を刺激し、 くぅ と音を鳴らしながらとぼとぼと歩く男が一人。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「あぁ、腹が減った」


名は流石父者。
49歳。ストレスと遺伝からくる頭頂部の禿げあり。影薄し。

本来ならば家族の大黒柱であるはずの彼は、
今ではその座を妻に奪われかけており、家族内での扱いは悪い。


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「……たまにはビールが飲みたいな。うん」


そんな彼の楽しみは、毎晩晩酌として簡単なおつまみ共に発泡酒を飲む事。
彼の稼ぎは決して多くない。なので好物のビールは飲めないのだ。


 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「あー 金持ちになりたいなぁ」

家の玄関先。トビラを開く前に一人愚痴る。
ため息をついた後、彼は家の中に入って行った。

 彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「た ただいまー」

家族からの返事は無い。
いつも通りだもんな、と諦め、リビングへ向かう。
リビングには、ソファーに座りテレビを眺める家族の背中があった。
食卓には既に食べ終わった後の残りと思われるおかずがぽつぽつと並んでいた。


( ´_ゝ`)「だからこれをさ」

∬´_ゝ`) 「いいわね」

l从・∀・ノ!リ人「賛成なのじゃ」

(´<_` )「兄者にしてはいい考えだ」


家族は彼をほったらかし、和気あいあいと楽しそうにテレビの感想を話している。
そんな楽しげな会話を背中で受け止め、彼は冷蔵庫からおつまみと発泡酒を取り出す。
あぁ、野球の結果が見たいなぁ、などと思いながら席につき、
この事を家族に言えば総スカンを食らうだろうなぁ。と想像してまたため息。
すっかり冷めたおかずに箸を運びながら、もそもそとご飯を食べ始めたときだ。


( ´_ゝ`)「父者。ちょっと話したい事があるんだが」

 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「えっ なんだなんだ そうか兄者も年頃の男の子だもんな! なんでも相談しなさい!」


話を急に振られて元気になる父者。相手はどうでもよさそうな顔をして話を続ける。
皆お年頃になってしまったため、普段家族内で仲良く会話が交わされる事は余り無い。
そんな中、息子からいきなり話しかけられたのだ。父者のテンションも上がる。


( ´_ゝ`)「いや、別に相談じゃないんだが」

 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「じゃあなんだ。言ってみなさい」


よほど嬉しいのだろう。父の威厳を出そうと胸を反り返して返事を返すが、相手は見ちゃいない。
だが父者はそれに気づかず、嬉しそうに頬を緩ませながらうきうきと返答を待っていた。


( ´_ゝ`)「父者にバンジージャンプをやってもらいたいんだ」

 彡⌒ミ
(*´_ゝ`)「はっ?」

 彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「ばっ 馬鹿な事を言うんじゃない! 父の日に何もくれなかった上にバンジーを強要するとは!」

( ´_ゝ`)「これは真面目な話だぞ。ほら、あの母者の目を見てみろ」




 @@@
@ _、_@  
(* ノ`)

促され、テレビの前にいる妻の顔を見る。
目をきらきらとさせ、指をoにした後oにもう一方の指を入れる。
あのサインは……。 承諾したら今夜okのサイン!

だがそれを見ても父者はまだ踏ん切りがつかぬようで、
しどろもどろになりながらも兄者に訪ねる。


 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「……ねぇ、本当に? 本当にバンジー? バンブーじゃなくて?」

( ´_ゝ`)「本当にバンジー」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「……なんで私がバンジージャンプなんてやらなくてはいけないのだ」

( ´_ゝ`)「それはだな……」


そう言って、父者の目の前から兄者が体をどかす。
そこには、さっきは背中で遮られて見えなかったテレビ画面がこうこうと輝いている。

鬱ちゃん内ちゃん 炎のチャレンジャー! これができたら百万円!

どこかで見た事があるようなタイトルの下には、
応募方法とハガキの書き方、そしてバンジージャンプをする男の映像が流れていた。


(*´_ゝ`)「これができたら100万円だぞ!」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「い、嫌だ! バンジーなんかできるかっ!」


父者の顔が青ざめ、箸を落とす。
なぜならその映像は、普通のひも付きバンジーではなく、
バヌアツ島に伝わる成人の儀式の方。

植物の蔦に足を結び、地面ギリギリまで落下する元祖バンジージャンプの映像。
というよりも、映像の男達は地面にしたたかに体を打ち付け、そのまま伸びている者もいる。
ツタはあってないような物らしい。


 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「これ死んじゃうだろう!」

(*´_ゝ`)「いや、母者と長年付き合って来ている父者の耐久力なら大丈夫」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「無理無理無理無理!」


激しく抵抗し、両手を前に突き出し慌ただしく振る。
奥にはさっきとは表情が一変し、妻が手の関節をならしながらこっちを見ているのが見えるが、
流石にこれは100万円よりも自分の命の方が大切だ。


だがそんな父者の様子を見た他の家族の口調が突然変わる。
ある物はいきなり棒読みに。ある物は他人が聞けば鳥肌が立つ程の猫なで声に。


( ´_ゝ`)「……うわー 父者 あんな物に挑戦するのか。すごいなぁー」

(´<_` )「……流石だな 父者 俺達には出来ない事を平然とやってのけるー」

∬´_ゝ`) 「そこにしびれるー」

l从・∀・ノ!リ人「あこがれるぅー♪」

 @@@
@ _、_@  
(* ノ`)「と言う訳でやりな! そうすれば発泡酒じゃなくてビールが買えるようになるよ!」






家族に褒め殺された父者は、その時のふいんき(なぜかry)に流され結局
この番組に応募する事となってしまった。
父者もただおだてられてこれに賛成した訳ではない。彼なりの理由があるのだ。


そして数週間後。






('∀`)「鬱ちゃん」

( ^ω^)「内ちゃん」


( ^ω^)『炎のチャレンジャー! これができたら百万円! スペシャル生番組!』('A`)


('∀`)「今回お越しのこの男性は2ちゃんねる美府市にお住まいの流石父者さん!」

( ^ω^)「今回はあなたの他に応募してくる方がいなかったんですお! 勇気ありますお!」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「いや、なんというか、えぇ」


テレビのモニターに映るのは、父者の輝くはげ頭。
どうやら今回この番組はスペシャルだったらしい。
だからあんなに過激な物が選ばれていたのか。
と父者は納得するが、納得したからといってどうにかなる訳でもない。

最終的には自分で選んだ道だと、自分で自分を慰める。


( ´,_ゝ`)「本当に出れるとは流石だな父者」


リビングでみんなで固まりテレビを眺める流石家。
特に心配している様子もなく、むしろ楽しそうにも見える。


( ^ω^)「はいはい! そんな訳で、僕達はバンジー発祥の地に来ていますお!」

('∀`)「どうです父者さん! いいながめでしょう!」

 彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「凄く……大きいです……」


カメラが父者のはげ頭から下がり、全体像を移す。
原住民が見守る中、広場の高台に立たされた父者の姿が映された。

台は木とツタで出来ており、父者がここから飛ぶだけで壊れてしまいそうに見える。
下から見るとそう大きくも見えないが、高さは10mはあるらしい。
父者の位置から見た10mと下からの10mとでは、見方にも随分と差が出るだろう。

そして陽気な解説者のまくしたてるような解説が入る。


( ^ω^)「今回、スタートの合図があってから10秒いないにジャンプ出来れば100万円ですお!」

('∀`)「簡単に思えるでしょう。でも、一歩間違えると地面に激突する恐怖にもある訳です」

( ^ω^)「その恐怖を10秒という短い時間の間でぬぐい去り、飛ぶ事が出来るか!」

('∀`)「そこが勝負の分かれ目ですね」

父者はその陽気な声を、まるで悪魔から死刑宣告でもされたかのような表情で聞いていた。

説明をされている間、横から手際よく原住民がツタを足に結びつけてくる。
今すぐにこの原住民を蹴り飛ばして逃げ出したい衝動に駆られたが、
こんな高い場所からするする降りれる程父者の運動神経はよくないし、
第一これは生放送。そんな事をしたら母者その他諸々にどんな目にあわせられるか。

だが……これを成功させれば、100万円。
いや、それ以上に父者にとって大きなものが手に入るはずだった。


( ^ω^)『それでは父者さん、張り切ってどうぞ!』('A`)


二人の悪魔が、嬉しそうに叫ぶ。



『10! 9! 8! 7!』



下を覗くと ひうん と意識と一緒に体も吸い込まれそうになる。恐ろしさのあまり頭がくらくらする。

遠くなる意識の向こう側に、家族の笑顔が見えた。
母者の若い頃の微笑む顔。兄者と弟者が仲良くベビーベッドに並んでいる顔。
妹者が嬉しそうに駆け寄ってくる時の笑顔。姉者が一緒にお風呂に入るのを拒否したときの汚い物を見るような顔。
今はもう見る事が無い、父者が父者として家族の中にいた時の記憶。




あぁ、これが走馬灯か……
影が薄い薄いと今は言われているがあの頃は普通に会話もあったし、子供達も素直だった。
懐かしさで胸がいっぱいになるが、カウントダウンは父者の心情におかまい無しにカウントされていく。


『6! 5! 4! 3!』



100万円を持ち帰れば、みんな喜ぶかな。
発泡酒から、ビールに格上げ出来るかな。
会社のみんなはこの勇士を見ているだろうか。
母者、兄者、弟者、妹者、姉者。みんな私のこの姿を見守っていてくれるだろうか。

ここから飛び降りる事が出来れば……



『2! 1!!』






足の裏に感じていた木の感触が無くなり、
体が重力に引っ張られるときの内蔵の違和感だけを感じる。

耳には興奮の頂点に達した人々の歓声と、
遠く日本で喜んでいるだろう家族の言葉が聞こえた気がした。

父者にとって、100万円よりも嬉しいもの。それは──



 彡⌒ミ
(#´_ゝ`)「私は流石家の! 流石父者だぁーっ!!」



みんなに見てもらい、家族のみんなに自分の存在を認められる事。







 彡⌒ミ
(*´_ゝ`) ♪


その後、父者が100万円を持って帰れたかどうかは、
ビールを飲んで満足そうな顔をしている、この表情を見ればわかるはず。






お題
・フラれて元気
・バンジージャンプ

COMMENT

これは…いい

2008.07.14 | URL | #nWNgL8hk [ 編集 ]

流石家族の中でも影の薄い父者にスポットライトがあたるのは珍しいよな。
ナギさんのところに行くと“父の威厳はバンジージャンプのようです”というタイトルだったかで素敵絵がついてるぞ

2008.07.14 | URL | K. #- [ 編集 ]

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