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  ☆  のようです   2009.03.05


 もうだめだ。 死にます。
 拙い字で真っ白な四角形の紙の中心にそう書いて、手に握っている鉛筆を机に転がした。
 手が鉛筆の黒鉛で汚れてしまっていた。小指側から手首辺りまで。

 今から命を絶とうとしているのに、こんな些細な汚れを気にしている自分が嫌になった。
 結局、いつものようにまた生きながらえるんじゃないか? と自分自身に問いかける。

 最初は、自殺を思い立った瞬間は死んでしまおう、今すぐ、直ぐにでもと確固たる決意を抱いていた。

「それなのに、何で」

 後から過去の事を思い出せるような生命状況にあるんだろうか。
 ニヤリ、と何故か机の上に丁寧に置かれている鏡に向かって嘲笑う。
 笑みを見て、怒りを覚えた。笑みを向けられて、殺意を覚えた。

「今度こそ、遺書も用意したし、死のう」

 拙い字で書かれているけれど、読めないというほどではないだろう。

「問題は、方法だねえ」

 血が出る死に方はどうだろうか? 痛いだろうから却下。
 薬を大量に摂取して死ぬのはどうだろう? 現在の所持金は三十円もない。
 ううむ、と頭を悩ませる。

 ノートを机の中から取り出して、開いた。
 はははははは、と内容を見た途端に愉快な笑い声が聞こえた。 誰からだろう? 多分私からだ。
 ああ、なんだ。 私は全然進歩していないじゃないか。

 確か、このノートには思いついた死に方を鉛筆で書きとめていたはずだ。
 死について考えていた学生の頃に書いた物だったので、よく覚えている。

「死に方を探して開いてみれば、コレなんだもの」

 ノートは、ラクに死ぬ方法やクルしんで死ぬ方法がとても綺麗な字でびっしりと書かれていた。
 ははは、と再び収まった笑いが込み上げる。
 ズサンなノートだなぁ、と過去の自分を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。

 セメントが剥き出しになった壁を殴って、怒りを沈める。
 ――ノートには、「死ぬ方法」がとても綺麗な字で書かれていた。けど、

 ラクに死ぬ方法の案に今よりも少し綺麗な字で、一つ一つ×印を付けられて却下と書かれているのだ。
 ――それも、ご丁寧に一つ一つに理由を述べて。

 ふひひ、と今度は気味が悪い笑い声が聞こえた。
 くだらないなァ、本当に。 本当にくだらない。
 ダレがこんな事を考えたんだろう。 いつの私がこんな事をしたんだろう。


 からんからんと音が鳴った。 その音に自分でも情けないぐらい驚き、恐る恐る振り返る。

「誰!? 用件は!?」

 ライスバーガーお届けにあがりましたー、と間延びした青年であろう声。
 デリバリーを遺書を書く前に頼んだなァと思い出し、声の主は業者だと判って、ほっとした。
 すぐにこの四畳半の狭い空間から這い出して、玄関へと向かう。玄関に用意していた鉈を手に取るのも忘れない。

 ↑の出来事が全て経過して、玄関のノブを掴む。 ドアを開くと同時に人の良さそうな顔をした青年の顔を殴り飛ばした。

「あァ、ダメじゃァないか。 せっかくのライスバーガーが地面にブチ撒けられちゃッたよ」

「!? な、なん、なんなんだ、よ! あ、あんた!」

「とてもとても怯えているなァ。 いまラクにしてあげるよォ」

「ヒッ、なんだ、おま、うわ!! やめろ! 来るなぁ!!」

「ウヒヒヒヒヒヒ」


 結果から言うと、彼は体中の液体を垂れ流しながらも自らの二本の足で私から逃げ切った。
 論理がおかしいだろう。彼は何故僕から逃げたんだろうか。僕はただ代金を払おうとしただけなのに。
 月末がそろそろやってくる。 月末になれば僕にはお金が入る。 いわゆる給料日だ。

「誰だい?」


 妖怪しかこんな時間には入ってこないと知っていたけれど、一応問いかけた。マナーと言うものだ。
 日が完全に沈んで、夜空には一つの星も浮かんでいない。 ただただ漆黒の空間で気配を感じたから問いかけたのだ。

 なんだい? もう一度問いかけた。
 のめばいいよ、と返事が返ってきた。 頭の中に響く、嫌な声だ。
 ににんかい? と頭の中に響く。 ズンと頭の中心が重くなった。

 ! エクスクラメーションマーク。 感嘆符。 バン。 スクリーマー。
 機嫌がやけに良いな、妖怪の声がよく弾んでいる。 頭に鈍痛が響き続ける。
 嫌いだよ、僕は君が。 そう告げるとすぅと気配は消えた。

「うあああ、明日も来るんだろうなァ。 ゆううつだよ。 糞ッ!」

 悪態を吐いて、寝転んだ。
 痛みを感じて、起き上がる。
 のみきれてなかったのだ。 骨が喉に刺さっていた。 小さな骨だ。

 どうしようかな、と迷ったように口に出したけれど、発言の直後にはもう喉に手を突っ込んでいた。
 うええ、とえづいてそのまま嘔吐物を床に吐き出す。
 するどい痛みが口内を抜けて行き、閉じていた目を開くと、地面には小指の骨が転がっていた。

「引っかかっていたのはコレだな」

 るーるるるー、口ずさんで骨を拾う。
 夜は冷え込むなァ、他人の体温をもらったはずなのにまだ寒い。
 ? クエスチョンマーク。 疑問符。 耳垂れ。 インタロゲーションマーク。


 夏はいつの間にか終わっていた。
 服もそろそろ変えなければいけないな。
 蛾が街灯に群がっていた。

 胃を投げつけてやった。 右手に持っていた、胃を。
 イライラしたのだ。 勿体無いけれど、仕方が無い。
 のーべんばー、ああ、くりすますだなあ、そろそろ。

 でも別にかまわないね。
 すきなのはいつだって月末だ。 それに町によく二人組みのご飯が手を繋いで歩いている。
 ↑なんて思うけれど、本当は少し寂しい。

 キッチンを帰ったら掃除しよう。
 ヤカンで沸かしているヘモグロビン達はどうしているだろうか。

 ? 疑問符が頭に浮かんだ。 こんな時間にご飯が外を歩いている。
 ワァ、気分が弾む。
 ! 感嘆符が全身に駆け巡る。 予想もしない出来事に体が喜んでいる。

 イイネ! 真っ赤なシャワーを浴びた。 温かい。
 イイよ、とてもイイ。 綺麗な色だ。 私は勝利のポーズをとる。
 Vサイン。ピース。ああ、今日もいつもどおり平和だ。



おしまい

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