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繰り返されるようです   2008.10.20


―――人間というものは、まず大まかに二種類に分けられる。


有耳種と無耳種だ。



前者には、頭頂部に猫や犬のそれを思わせる耳がにょっきりと生えている。

彼らはそこで音を聞く。
ちょうど三角の耳を持つものもいれば、大耳や丸耳、棒状の耳を持つものもいる。


後者は――まぁ、君たちにいまさら説明はいらんと思うがね――
無耳種とはいっても耳はあるのだが、有耳種とは違い、その耳はこめかみの下、
ちょうど君たちと同じところに耳がついているのだ。

有耳種と比べ、その耳には産毛しか生えておらず、大きさも小ぶりである―――


(,,゚Д゚)「さて、ここまでで何か質問はあるかね?」

教室内は、奇妙な倦怠感が漂っている。
私が学ぶ立場であった時代にも、この空気ははたしてあったろうか。

初老に近い年齢に差し掛かったギコアール教授は、諦観にも似た思いでため息をつき、
眼鏡の汚れをハンカチでぬぐった。


教室内には、みたところ無耳種の者しかいないようだった。

国によって、無耳種と有耳種の割合は大きく異なる。
この国では無耳種が圧倒的多数を誇っていた。
国外から招かれた学院教授であるギコ教授は、有耳種である。
隣り合うふたつの国は、有耳種と無耳種を国という境で分たれているのだ。


(,,゚Д゚)「―――君たちの知っている通り、有耳種と無耳種の間には長く深い隔たりがあった」

おおよそ、我々とは、自らと違う形のものに対して排他的なものである。
有耳種と無耳種の場合がその際たるものだ。

その発生については諸説があり、どちらが発祥で、どちらが進化系であるのか、
いまでも議論の種となるやっかいな代物である。

真実がどうであれ、有耳種は自らが優れた種であるといい、無耳種もまた自らを
優れた種であるとして譲らなかった。


そしてその相違は、時として争いを呼び寄せる。


時はヴィップリオ暦774年。

モナンス国王、モナール・モナヴァンの突然の崩御により、モナールの第一子である
モララエル・モナヴァンが国王の座に即位した。

モララエルは、国教である有耳教の熱心な教徒であった。
それは、モナンス国土にある他宗教を弾劾し、あらゆる全ての無耳種の者を皆殺しに
してしまうほど熱心に。


そうして宗教に狂いし国王を持ったモナンスは、無耳種の国として栄える隣国ツンデニアへと
侵攻することとなる。


(,,゚Д゚)「モナンスがツンデニアへ向けた声明、それは人間を人間と思わぬ非道なものだった」


――曰く、『無耳種は人にあらず。
       これは畜生に支配された地を、我らが有耳種の手に取り戻す戦である』と。


その瞬間、教室の空気がすう、と重くなるのを感じる。
何年もの間教壇に立ち教鞭をとってきたが、いつの時代であっても、この瞬間だけはどうしても
慣れることができない。
突き刺さるような視線。自らの領地に侵入してきた敵兵を排除するかのような――

(,,゚Д゚)「――まったく愚かとしか言いようのない、恥ずべき思考である」

そう吐き捨てると共に、教室の雰囲気が軟化する。
……何人かは、いまだ表情を固くしてはいるが。


有耳種の私が、無耳種の彼らにこの歴史を教えるということは重要な意味を孕む。
そう私に告げたのは、この学院を治める、スカルチノフ学院長だ。

/ ,' 3 「あなたなら、この意味がわかるはずです」

(,,゚Д゚)「……はい」

/ ,' 3 「我らの歴史は、争いの歴史。しかしその歴史はもう終わるべきなのです。
     だからこそ、無耳種である我々ではなく、有耳種のあなたに、
     争いの醜さ、愚かさを説いていただきたい……」


長きに渡る戦乱は、人々の心に憎しみの轍を刻みつけた。
それは消えることなく、人の歴史の続く限り巡ってゆくのだ。
だからこそ、その轍が深くならないよう、どこかで誰かがその間違いを教えてゆくべきなのだろう。



校舎に、終了のベルの音が響き渡った。
授業の終わりを告げると、生徒たちはそれぞれに見知った顔に話しかけながら思う方向へと向かってゆく。
その流れに逆らって、こちらに向かってくる女性がひとり。

从'ー'从「――ギコ教授、お久しぶりです」

(,,゚Д゚)「……渡辺くん、か?」

从'ー'从「えへへ、覚えていてくださいましたか」

彼女は確か、私がここに赴任してきた始めの頃の生徒だ。
あの頃は私の授業を選択するものの数も少なく、有耳種であることであらぬ噂を立てられたものだった。
そんな私の授業に、彼女は飽きもせずまじめに出席をしてくれたのをよく覚えている。

嬉しそうに頬を綻ばせる様は少女のようだが、あの頃と比べて、ずいぶんと大人っぽくなったような……。

从'ー'从「私の姪っ子が今度この学院に受験するんです。
      それで、私が構内を案内してたんですけど、つい教授の講義が懐かしくなって」

勝手に混じって聞いちゃいました、と笑う彼女は、やはりあの頃のままの少女らしい顔つきであった。
変わっていないことにどこか安堵して、私は彼女に、昼食の予定はあるかとたずねる。

从'ー'从「お誘いは嬉しいんですけど、姪を送っていかなきゃならないんです」

(,,゚Д゚)「……そうか。気をつけていきなさい」



はい、ありがとうございます、と微笑んで去って行く彼女の背を、何故止めてやれなかったのかと今でも悔やむ。


彼女と彼女の姪を乗せたバスが爆破されたと知ったのは、その日の午後のことだった。

歴史は繰り返す。争いの歴史もまた然り。
それを示すかのように、テレビの中でテロリストがささやく様に宣言した。



( ・∀・)『――無耳種は人にあらず。
      これは畜生に支配された地を、我らが有耳種の手に取り戻す戦いである――』






     繰り返されるようです     おわり


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