証券 K.2nd:墓参りへ向かうようです

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墓参りへ向かうようです   2008.09.21

随分と前の事。小学校で宿題を出された。
自分の名前の由来を聞いてくるようにと言う、在り来たりな物だった。


(´<_` )「母者。なんで俺は『弟者』なの?」

 @@@
@#_、_@    
 (  ノ`) 「そりゃあ、姉者がいるからさ」

(´<_` )「そうか」


その時はその答えに納得した。自分でもそうだと思っていたから。
だけど今考えると、少しおかしいような気がしないでもない。

子供を複数作る事前提で姉者にあのような名前を付けたのならば、
俺は兄者と命名されるべきだったんじゃないかと。
今年も墓参りに行く事になった。
某県の地方都市。そこの山中に、我が流石家の墓がある。

家族五人で車に乗って、高速を目一杯走る事三時間。
父者の実家に行って荷物を置き、墓参りをして、その後はだいたい海へ行く。
それが我が家の夏の過ごし方。何年も前から変わる事が無い習慣。

 @@@
@#_、_@    
 (  ノ`) 「ほら、挨拶しな!」

(´<_` )「こんにちは爺者」

 /≡\
(´<_、` )「久しぶりだねぇ弟者。もう中学生か」

 /≡\
(´<_、` )「姉者は今年はいないのかい?」

 @@@
@#_、_@    
 (  ノ`) 「あの子はバイトで行けないとか言って、家で留守番をしています。二泊三日なら大丈夫と平気とか」



 /≡\
(´<_、` )「そうか……残念だ。妹者は背が伸びたかな?」

l从・∀・ノ!リ人「えへへ、伸びてる?」

(´<_` )「あんまり変わらないだろ」

l从・∀・ノ!リ人「ひどいのじゃっ!!」


爺者は婆者が死んでから一人で住んでいるらしい。
顔を見せるといつも嬉しそうな表情で、しわだらけの手を俺の頬に当てる。
にきびが増えたと言われた。少し傷ついた。

和室に荷物を置いて、片隅に置いてある仏壇に手を合わせる。
仏壇には婆者のいかめしそうな顔写真と、甘い香りを放つ果物、ろうそく、その他諸々。
ろうそくに火をつけたがる妹者をなだめ、手を合わせて挨拶をする。


両脇の提灯が静かに回っている。妹者はこれを見ていつも喜ぶ。
壁に移った模様と、提灯の淡い明かりを見ていると、なぜか気が遠のいて来る。

そしてその現象に俺は毎年遭遇していて、
気が遠のいた先に何かがちらほらと浮かんでくるのだが、その正体を見極める前に、
大概誰かの声に呼ばれ、この世に戻ってくるのだ。

もしかしたらそれは、覗いてはいけない世界なのかもしれない。



l从・∀・ノ!リ人「弟者?」

(´<_` )「あ、あぁ。なんだ妹者」

l从・∀・ノ!リ人「母者が、墓参りにいくから帽子持ってきなさいって言ってるのじゃ」

(´<_` )「いいよ。頭蒸れる」

l从・∀・ノ!リ人「にっすぁびょーになるのじゃっ!」

(´<_` )「噛んだな」

l从・∀・#!リ人「うるさいのじゃあ!」


居間を出ると、廊下の鏡の前で母者が化粧をしている所だった。
年々化粧が厚くなっている気がするが、俺は何も言うまい。
俺が成長するにつれて、母者はだんだんとおばさん臭くなっていっている気がする。

少し、悲しい。



近くにある山へ車で移動する。
山の中腹にあるその墓は、木々に囲まれていつも湿っぽい雰囲気に包まれている。

線香の臭いが土の臭いに混じって漂って来る。
前はよく、昔土葬された人の死体が夜な夜な這い出て来ると姉者に脅された物だが、
もうそんな物は信じていないし、そんな物におびえる年でもない。

墓の端の方。金網越しに町が見える崖っぷちに、我が家の墓がある。
灰色の特に目立つ事もない墓には枯れ葉が大量にたまっていて、
母者は持って来た掃除セットで、せっせと墓を磨いている。

周りの雑草をむしるのは、父者がいないときは俺の役目となっている。
ちなみに妹者は、なむなむをする役。

 @@@
@#_、_@    
 (  ノ`) 「しっかり草を抜くんだよ! ご先祖様が化けて出て来るよ!」

(´<_` )「okok わかってるって」


隣の墓に供えてある物に触れないように、俺は墓石の裏に回る。
既に母者が磨き終えたその墓石、木漏れ日が照らす中刻まれた文字が見えた。


…~者、~者、~者、婆者、兄者…


(´<_` )「ん……?」



今までこんな物を見ようと思わなかったので、こうしてはっきり確認するのは初めてだった。
婆者はわかる。だけどその横に『兄者』と刻まれているのが、気になったのだ。

兄者。兄。男兄弟の上の人間に使われる言葉。
だけど俺の兄弟は女しかいない。


粗方掃除し終え、恒例のなむなむタイム。
妹者は墓に手を合わせる意味が分かってるのだろうか。


l从・∀・ノ!リ人「えーとー ケーキー シールー プロフィール帳ー」

(´<_` )「妹者、願い事唱えたってご先祖様は何もしてくれないぞ」

l从・∀・ノ!リ人「唱えないよりかは唱えた方がいいのじゃ!」

(´<_` )「あと、手も叩かない」

l从・∀・ノ!リ人「叩いた方が景気がいいのじゃ!」

(´<_` )「そういうんじゃないんだけどなー」



まぁいいか。
妹者の事は置いておいて、俺も墓に向かって手を合わせる。


えー ご先祖様。婆者。顔も見た事無いけど、こんにちは。
いつも多分お世話になってます。これからもよろしくお願いします。
あー 後、妹者の願いを叶えてやって下さい。


目を瞑って挨拶をする。
こういう時、なんと言えばいいのかわからないので適当に挨拶をする。
この時期によくやっている、スピリチュアルな番組でもチェックした方がいいのだろうか。


太陽が少し傾き始めた。
俺たちは墓場を抜け、途中すれ違った住職さんに挨拶をし、車に乗り込む。

車独特のあの臭いが嫌いなので、俺は乗り込むなりすぐに眠る事にしている。
冷房の、あまり気持ちが言いとは言えない冷気に包まれていると、火照った体はすぐに冷やされ、
汗は肌にまとわりつき、余計に俺の体温を下げる。 寒い。さむい。冷房を止めてくれ。



……さむい

そういう時は、こうやって動き回ればあたたかくなるよ

ほら、ぐるぐるぐるぐる。 っぅおぇっ

めがまわるのはいやだよ

じゃあ、他に何して遊ぼうか

うーん


あっ だめだもう帰らないと

どこに?

どこかに




l从・∀・ノ!リ人「弟者! 家に着いたのじゃ! 降りるのじゃ!」

(´<_` )「うー」

l从・∀・ノ!リ人「途中で買った桃、妹者が全部食べちゃってもいいのじゃ!?」

(´<_` )「いいよいいよ。どうせ妹者は食べきれなくて残すだろうし」

l从・∀・#!リ人「むきー!」


仕方が無いので車から降りる事にした。

居間の方では母者が何かを煮込んでいる音と、包丁で刻む音。
爺者があぐらをかいて甲子園の野球中継を見ていて、その上に妹者がちんまり乗って、
ルールがわからないようだったが、敵味方関係なく嬉しそうに応援していた。

まだ少し眠気が残っているようだ。
居間は少し騒々しいので、俺は仏壇のある和室で荷物を枕にして一眠りする事にした。
夕飯の時間がくればきっと妹者が起こしに来てくれるだろう。

電池が入れっぱなしだったのか、仏壇の脇の提灯がまだ回っている。
そのぼんやりとした明かりを眺めながら、俺はどこかに沈んで行く。


ぐぅ





……どこかにって、どこ?

あぁ、俺もよくわかってないんだ

だけど、もうこれから会う事も無いんだろうな

なんで?

俺とお前は、本当は会っちゃいけないんだ

いけないことすると、ははしゃにおこられるよ

うん。怒られちゃうな

おこられてもいいの? なんであいにきたの?

男の兄弟が欲しかった。そして、男の兄弟が生まれた。それだけでもう、わかるよな?

んー?

わからないか。俺の説明が下手だからだろうな

いや、ぼくがわからないせいだよきっと

はは 流石だよな俺ら




俺よりも年上の少年が、俺の前に座っている。小学生くらいか、中学生くらいか。よくわからない。
俺はまだ幼稚園児で、その少年の言う事の半分も理解出来ていない。

どこかの家の、どこかの部屋で、辺りにはおもちゃがとっちらかっている。
ひぐらしの声が壁から滲み出てくるように聞こえていて、
一個だけある小さな窓からはオレンジ色の柔らかい夕日が入り込んでいた。
その柔らかい夕日は、まったく似ていないのになぜかさっきの仏壇の灯火を連想させた。

これは夢? だけど実際にこんな事があった気がする。
続きが見たいけど、見れない。
少年が軽く笑った後、世界はフェードアウトして、真っ白になった。


……

( ´_ゝ`)「よくわからない夢だろう」

(´<_` )「よくわからない夢だな」

( ´_ゝ`)「夢なんてそんなもんさ。支離滅裂で、場面展開がめちゃくちゃで、だけどなぜか納得がいく」

( ´_ゝ`)「悲しい事も、楽しい事も、見た後全部忘れてしまう。そんなものなんだ」

(´<_` )「……」

( ´_ゝ`)「人の夢 と書いて儚いと読むくらいだからな。うまい漢字を作ったもんだ」

(´<_` )「……」



( ´_ゝ`)「あぁ、今更だけど久しぶり。何年ぶりだろうか。お前今何歳?」

(´<_` )「14」

( ´_ゝ`)「はは 中二病真っ盛りじゃないか。だからこんな夢を見るんだよ弟者君」

(´<_` )「うるさいな」


俺とあまり年の変わらない、いや、俺よりも背の小さい少年は、
さっきの夢とまったく変わらない格好で、そこに立っていた。
年の差は二歳くらいか。俺とそっくりの顔をした、色の白い少年。

場所はどうやらさっきの和室のようだったが、
俺たちの荷物がなく、ふすまは開いているがその先の居間には誰にもいなく、
和室の家具はとっぱらわれ、仏壇だけがそこにあった。

少年は仏壇に供えてある果物を宙に放りながら、俺に話しかけて来る。


( ´_ゝ`)「いやぁ。それにしても、年を追い抜かれてしまうとは。時の流れには驚かされるばかりだ」

( ´_ゝ`)「姉者。もうバイトをする年か。妹者。ありゃべっぴんになる。それに気だてもよさそうだしな」

( ´_ゝ`)「母者はあんなにしわだらけになってしまった。高齢出産なんて大変だろうに」

(´<_` )「そんな事を母者の前で言ってみろ。ふるぼっこにされるぞ」

( ´_ゝ`)「言えないからここで言うのさ」

(´<_` )「確かに」

( ´_ゝ`)「あぁ、そういう時は確かになんて寂しい返しじゃだめだ。『流石だよな』って言わないと」

(´<_` )「なんだそりゃ」

( ´_ゝ`)「だって格好いいだろ?」

(´<_` )「うーん?」



畳にあぐらをかく少年は、果物を放る事に飽きたのか、
耳の後ろをぽりぽりとかきながら変な言葉を俺に言わせようとして来る。

じっ と顔を見つめられ、俺はよく意味もわからぬまま返事をする。


(´<_` )「さ、流石だよな?」

(*´_ゝ`)「いぇー それでいい。流石だよな俺ら!」

(´<_` )「なんで流石なんだよ」

( ´_ゝ`)「うん、お前は流される事も無くここまで育ってくれて、俺は嬉しい。そんな意味だよ」

(´<_` )「余計意味分からん」

( ´_ゝ`)「俺の説明が下手だからだろうな」

(´<_` )「多分そうだろうな」

( ´_ゝ`)「はは 流石だよな俺ら」



そういうと、少年はふぃっと仏壇に吸い込まれるようにして消えた。
和室は途端にその形を崩し、ぐらぐらと揺れて、先の見えぬ闇に吸い込まれて行く。
俺は揺れる事も無く、吸い込まれる事も無く。そこに立ち尽くしている。

ぼんやり光っているような闇に包まれていると言う矛盾した空間で
どうする事も出来ぬままただ立っていると、
どこからかさっきの少年の声が聞こえて来た。


「もう会う事はないだろう。俺の事はもう思い出すな」

(´<_` )「……」

「返答無しは肯定と受け取るぞ」

(´<_` )「勝手だな。流石だよな兄者」

「……! 流石だよな弟者」



l从・∀・ノ!リ人「弟者ー! ご飯!ご飯の時間なのじゃー!」

(´<_` )「うー」

(´<_` )「今いく。今いくから上に乗らないでくれ」

l从・∀・ノ!リ人「あー 腕に畳の跡があるのじゃー。気持ち悪ーい!」


けたけたと笑うと、妹者は居間の方に走って行った。
ゴールデンタイムの馬鹿バラエティーの騒々しい音がこっちまで聞こえる。

骨をぼきぼきと言わせながら、まだ覚醒しきっていない頭で周囲を見渡す。
荷物。家具。仏壇。だけどいつもと違う気がする。

何やら夢を見ていたようだが、よく思い出せない。
のどの一歩手前まで言葉が出かかっているような気持ちの悪い感覚がするが、
こういう事はよくある事だし、思い出しても意味は無い事が多い。



ずりずりと畳の上を立ち膝で移動し、どっかと仏壇の前に腰を下ろす。
なんとなく、仏壇に備え付けてある小さな引き出しを開ける。
予備のろうそくと、マッチと、小さなお守りと、これまた小さな仏像がしまってあった。

お守りをひっくり返して、表に描かれた文字を見ようとする。
安産? 学問? いったいこれはなんのお守りだろうか。


l从・∀・ノ!リ人「弟者! ごーはーんー」

(´<_` )「あ、あぁ。今行くって」


見られては行けない現場を見られたような気がして、
俺は慌ててそのお守りを引き出しの中にしまった。



のっそりと立ち上がり、居間へ向かう。
部屋を出た所にある鏡に、目の細い眠たそうな顔が映った。

自分の顔のはずなのになぜか親近感が湧くその男に向かって、
俺は自分にだけ聞こえるように、ぼそりとつぶやいた。


(´<_` )「流石だよな、俺」


居間の方から、妹者が爺者にケーキありがとうとお礼を言っている声が聞こえた。
ケーキなら、俺の分を残す事も無く妹者が全部食ってしまうかもしれない。
早く居間に行くとしよう。




終わり

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