証券 K.2nd:ξ゚⊿゚)ξかたっぽの靴下、なようです。

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ξ゚⊿゚)ξかたっぽの靴下、なようです。   2008.08.19

 ブーンは大きなショルダーバッグを肩にかけたまま、
私の頭をぐりぐりと撫でた。
少し高い位置から伸びる手のひらの感触が、
気持ちをざわつかせる。
決して、顔には出さないけれど。

 この家の玄関は、さむすぎて身動きがとれない。


ξ゚⊿゚)ξ「とっとと行きなさいよ、バーカ」

( ^ω^)「おっおっ、ほんとは行ってほしくないんだお?」

 瞳をいたずらに細くして、ブーンはわらう。
いつものゆるやかなそれではなく、意地の悪い顔で。

 たかだか一ヶ月、地元に戻るだけなのに、
まるで永遠の別れのようにおもえてしまうのは。

 ブーンが私の細胞にすっかり馴染んで、
溶け込んでしまっているからだ。
彼の存在を認めたときから、ゆるやかに侵食されて。

ξ#゚⊿゚)ξ「……は? 誰がんなこと言ったのよ。
      むしろ清々しいくらいだわ」

 ブーンのあたたかな手のひらを振り払い、
両腕を組んで本音を押し隠す。

 詐欺師みたいに、上手に嘘が吐けるなら、どれほど良いか。
私の思惑なんて、きっとばれている。
そして、それを知りながら彼はこう言い退ける。


( ^ω^)「それは良かったお。
      ツンがバカみたいに引き止めたら、
      どうしようかと思ってたお。たまにいるお?
      こっちの都合考えない、自分のことばっか押し付けてくるヤツお」

 すらすらと言葉を並べられ、
聞き流せばいいのに律儀に耳に入れた結果。
それはアンタのことよ、と。複雑な想いが駆け巡った。

 甘えたり頼ったり懇願したり、求めたり。
そういうことをしたいとは、思わないけれど。
ふつうの女みたいに、したくないけれど。

 私の部屋に勝手に住み着いて、勝手に馴染んで、好き勝手行き来して。
私の主張や権利はぜんぶ捨てられて。
それでもまだ、傍にいて欲しいとおもう自分が情けない。

 昔からひとつのことに熱中してしまう性質だった。
それがこんな事態を招くとは、誰が思う?

 胸が息苦しく詰まり、にやにやとわらうブーンの顔が滲みかける。
組んでいた両腕を突っぱねて、ブーンを玄関から追い出そうと押した。
むかつく。確信犯こそ憎らしい。

ξ#゚⊿゚)ξ「はいはいはいっ、
       どうするつもりだったのか知らないけど
       新幹線遅れるわよ。てゆーか、当分帰ってこないで」


( ^ω^)「あ、ツンが拗ねたおー。かーわーいいーおー」

ξ#゚⊿゚)ξ「う、っるさいわねぇ、出てって!
       二度と帰ってくんなっ!!」

 まだ何か言いたそうなブーンを扉の向こうに追い出し、
無理やり閉じて鍵をかけた。がちゃん。

 こうした展開の後に、ブーンはやさしく謝ってくる。
それはそれは、儀式みたいに。
鞭と飴を使い分け、私を逃さないように調教する。


 しかし扉の背に凭れ、息を正していても。
一向に謝ってくる気配はなく、私のいやな動悸は治まらない。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン……?」

 おそるおそる名前を呼んでみたが、返事はなく、
足許からすぅ、と冷えが走って全身を凍らせた。



 まさか謝りの一言も無しに行ったの?
私が一方的に悪いから、ブーンは謝らないの??
いやでも、以前も似たようなパターンで謝ってきたから
今回とは似て異なる……。

 なにか、取り返しのつかないことを
やってしまった気がして、慌てて扉を押し開けた。

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン!?
      …………なによ、なんでいないの」

 どこかで焚き火をやっているのか、焦げたにおいが漂っている。
サンダルを引っかけ、玄関から飛び出してみたけれど、
ブーンの姿はどこにもなかった。



ξ゚⊿゚)ξ「薄情なやつ……
      後味悪いじゃない、ばかブーン」

 冷静によくよく考えると
落ち込むだとか哀しいだとかではなく、なんだかむかむかしてきた。
いっそブーン離れ――そう表現するのは凄く不快――するいい機会ではないのか。

 部屋に戻り、干しっぱなしだった洗濯物を取り込んでたたむ。
家事のほとんどをブーンに任せていたから、この作業をするのは久し振りだった。
てきぱきとシャツや下着を折りたたみ、アイロンが必要なものは避けておく。

ξ゚⊿゚)ξ「あんなの、私が悪いみたいじゃん」

 絶対に自分からは謝りたくない。屈しない。
私の内心を判ってて意地悪を言うブーンが悪い。
常識的に考えて。
自己暗示のように唱え、洗濯鋏に留められている黒い靴下を取った。



ξ゚⊿゚)ξ「……なんで片っぽだけなのよ」

 他の靴下もすべて取り外し、それぞれを絵合わせのごとくペアにしていくが
どうしても一組、黒の靴下が足りない。
別々に洗う訳もないのに、何故。
指先で摘まんで、目の前でゆらゆら揺らしてみる。

ξ゚⊿゚)ξ「……ふたつで、ひとつなのになぁー……」

 思いがけず漏れた言葉に苦笑し、並んだペアの靴下を眺める。
 
 洗濯機にいれるときは裏返しにするお!
口煩くブーンは言うくせに、片方を無くしていたら
元も子もないじゃない。どこか抜けている。
紛れもなくバカだ。アホだ。


ξ゚⊿゚)ξ「あ゛ー……結局これなのよね」

 結局、どう足掻いても。ブーンのことを考えてしまう。
考えるな、忘れろ。
そう思えば思うほど、頭の中をぐるぐるまわり、
気を抜いていても、何かの拍子でふっと浮かび上がる。
離れられない、最早あきらめに近い。



 靴下をそっと置いて携帯を手にした。
シンプルなのが好きなのに、ブーンがくれる土産ストラップが、鬱陶しくついている携帯。
親指をすべらせ、戸惑い、悩みながらメールを打つと、
添付として片方だけの靴下写メを送った。


 数分後、ブーンから引用付きの返事が届くのだけれど、
生きていてこれほど、後悔したことはない。

 あんなガラにもないメールを作った自分を呪い、読み返しては悶絶し、
恥ずかしさのあまりトイレに閉じこもることにした。

 どうかブーンが、言葉の意味に気付いていませんように、と願いながら。



宛先:ブーン
件名:靴下
本文:
片方ないのは不便だから、はやく探しに来なさい。




追伸
ブーンも私もバカだけど、アンタの方がよっぽどバカなんだからね!



終わり

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